黒柿とは
黒柿は、古木の柿(Diospyros kaki)の心材の一部にだけ現れる、黒〜灰墨色の帯や雲状の模様をもつ非常に希少な材です。長い歳月をかけて木内部のタンニンと鉱物・鉄分などが関わり合うこと、あるいは生理的要因が重なることにより自然発生すると考えられており、同じ木でもごく一部分にしか現れません。人工的に鉄を打ち込んで黒くする「打ち柿」とは異なり、自然が描いた不可思議な“墨色”が黒柿最大の魅力です。
文様の見どころ
黒柿に現れる模様は「墨流し」と呼ばれ、筆墨をにじませたような流線、縞(しま)、雲紋、孔雀杢(くじゃくもく)など、一本ごとにまったく異なる景色を見せます。淡い飴色の地(白太)に、黒やスモーキーグレーが溶け込むコントラストは、古来、茶道具や文人調の什器に珍重されてきました。本作も、木が自ら描いた墨絵のような抽象美を、掌に載る小宇宙として閉じ込めています。
素材としての性質
柿材は比重が高く緻密で、磨き上げるとしっとりとした艶を帯びます。一方で、黒い部分と地の部分で比重や含水率が微妙に異なるため、乾燥・加工には高度な管理が必要です。十分に養生させた材を選び、寸法の安定を確保してから挽くことで、四季を通じて安心してお使いいただける香合に仕立てています。
香合としての仕立て
香合の命は「合口(あいくち)」です。轆轤師が一つひとつ、口縁の段差やわずかな“吸い付き”を調整し、開閉のたびに気持ちよい納まりを実現。内側まで丁寧に面を取り、練香・印香・抹香・香木小片などが収まりやすい形状に整えています。表面は木肌の呼吸を損ねないオイル/ワックスで艶を引き出し、黒柿特有の深い陰影を際立たせました。





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